『カルニヴィア 2 誘拐』 | 本だけ読んで暮らせたら

『カルニヴィア 2 誘拐』


『カルニヴィア 2 誘拐』  ジョナサンホルト/著, 奥村章子/訳, ハヤカワ・ポケット・ミステリ(2014)


イタリアを舞台としたミステリ・シリーズ第2弾。  『カルニヴィア 1 禁忌』 の続編。


主役級の登場人物は3人。

そのうちの2人が,イタリア駐留米軍の女性中尉ホリー・ボランドと,イタリアの憲兵隊刑事部の女性大尉カテリーナ・ターポ。この2人がメインの捜査官となって,事件の謎に挑むことになる。

そして,もう一人が,「カルニヴィア」と呼ばれる仮想現実社会とSNSをネット上に構築したダニエーレ・バルボ。過去に誘拐され,顔に傷害を受けたことのある引きこもりの天才数学オタク。


高度に発達したカルニヴィア内には,現実社会では明かされていない情報が転がっていることがある・・・。カルニヴィア内の人物(アバター)たちによって,情報のやり取りが行われる・・・。


物語には,謎を解明するために「カルニヴィア」が鍵となるような状況が構築されていて,カルニヴィアとそれを創設したダニエーレの存在と性格が実に巧く配されている。


この第2作では,イタリア駐留米軍将校の娘の誘拐事件を中心に,米軍基地拡張工事中に見つかった人骨=第二次世界大戦中に行方不明となったパルチザンのものと判明=の謎を絡めた問題に,主人公の2人の捜査官が挑む。


誘拐犯人は,米軍基地拡張の反対を訴え,監禁した少女の状況をインターネットで世界中に動画配信し,世論の動向を伺っている。

ネット上の情報となると,そこには「カルニヴィア」が絡んでくる・・・。

カテリーナとホリーは,ダニエーレへの協力を求める・・・。

と云った具合にストーリーは進んで行く。



日本と同様,第二次世界大戦の敗戦国であるイタリアには,現在も1万人以上の規模の駐留アメリカ軍が存在する。イタリア国内では,そうしたことの賛否が社会問題化することもあるらしい。日本国内の日常のニュースでは,あまり窺い知れない情報・・・。こうしたイタリア社会の状況に触発されたと云っている作者。

そのためか,このシリーズには,大規模に駐留する米軍の存在がイタリア社会に及ぼしている影響が色濃く反映されている。

なもんだから,エンターテイメントを読んでるにも関わらず,コチラとしても,どこの国でも同じような問題を抱えてるんだなァ~?なんて思っちゃうわけだ・・・。



さて,第1作の読了後もそうだったが,この第2作を読んだ後になっても,わざわざ3部作とする必要があるのか?という疑問が湧いてくる。物語としてはどちらも独立しているようだし,両作に共通の謎なども垣間見えない?

だが,わざわざ「3部作」と謳っているのには何か理由があるのだろう。

イギリス人作家が,イタリアを舞台として,第二次世界大戦に纏わる歴史上の謎やアメリカ軍駐留問題を題材としたミステリを描いてる・・・・。

そこには国際的謀略が隠されているのか??

シリーズを通底する謎は未だ明らかになっていない!?