『たとえ傾いた世界でも』 | 本だけ読んで暮らせたら

『たとえ傾いた世界でも』


『たとえ傾いた世界でも』  トム・フランクリン&ベス・アン・フェンリィ/著, 伏見威蕃/訳, ハヤカワ・ポケット・ミステリ(2014)


前作 『ねじれた文字、ねじれた路』 が良かったので,同著者の今作も読んだ。

・・・と云っても,今作は奥さんとの合作だ。

で,その合作だが,以前にも彼らの合作を読んだことがあった。 ⇒ 『ミステリアス・ショーケース』



***** 以下,本書379ページからの引用です。 *****

 この物語は,殺人,密造,土嚢積み,破壊活動,ダイナマイト,大洪水の物語なの。冷酷な夫,ちょっと問題のあるおじさん,怖いフラッパー,忠実な相棒。よくない男と結婚して,毎日すこしずつ死にかけていた女がひとり。自分はかりそめの存在だと思っていた男がひとり。

 でも,なによりも,これは愛の物語なの。あたしたちがどんなふうに家族になったか,という物語なの。

***** 引用,ここまで。 *****


孤独だった二人の男と女の物語。その孤独が解消される物語。

扇情的な言葉など使わなくても,無意味な惹句など用いなくても,淡々とした描写で,せつなく美しい物語が描かれることを示している本書。


お薦めです。