『黒い瞳のブロンド』 | 本だけ読んで暮らせたら

『黒い瞳のブロンド』

今月は,カルロス・ルイス・サフォンの新作とフィリップ・マーロウもののパスティーシュが出るということで楽しみにしていた。

さっそく両方とも読んだ。


サフォンのは,前2作を繋ぐ役割を果たしており,おそらくシリーズの中核をなす作品であり,かなりの謎が明らかになりつつある。・・・といっても,まだまだ深まる謎は多々あり,次回最終作への期待は膨らむばかりだ。

天国の囚人 (集英社文庫)/集英社



で,マーロウものの方である。。。


the black-eyed blond (2014)
『黒い瞳のブロンド』  ベンジャミン・ブラック/著, 小鷹信光/訳, ハヤカワ・ポケット・ミステリ(2014)

私立探偵フィリップ・マーロウの事務所を一人の美しい女が訪れる・・・。 絶世の美女クレアが持ち込んだ人探しの依頼。 なぜクレアはその男を探すのか? 理由を聞いても今一つ納得できないマーロウ。 だが,美女の依頼とあっては断る理由もない。
・・・・・物語の始まりはイメージどおりだ。

事件に巻き込まれるストーリーの展開も,街や人の描写も,チャンドラー・スタイルを踏襲しているように思える。 

だが,読み進めていく過程で何か引っ掛かるものがある。 なんだろう?

違和感を抱えながらも読み終える。

特別の面白さはない。 かと言って駄作でもない。

それよりも違和感だ・・・。 どうにも釈然としない読後感だ。


読後しばらくして,風呂に入ってボーっと考えていて浮かび上がってきたのが,以下のようなことだ。

さっきまで読んいた小説の主人公の私立探偵は本当にフィリップ・マーロウだったのか?

マーロウっぽくなかったのでは? そこに違和感があったのでは? なぜマーロウっぽくなかったんだ?

この物語の探偵はやたらと依頼人の女のことばかり考えていた。それもメメしい感情を読者に対してあからさまに撒き散らかしながらだ。

私の記憶の中の“チャンドラーが描いたマーロウ”はそんな男ではなかった・・・はずだ。


過去のフィリップ・マーロウものの記事

『ロング・グッドバイ』  『さよなら、愛しい人』  『リトル・シスター』  『大いなる眠り』