『小布施 まちづくりの奇跡』
長野県北部の小さな町、小布施(おぶせ)。
この町には毎年、人口の100倍=120万人の観光客が訪れるらしい。
観光客の主な目当ては、町の中心部にある「修景地区」と呼ばれる地域を散策することにあるのだという。どこか懐かしい趣きを醸し出す場所らしい。
通常の「伝統的町並み保存」とは異なる手法=修景(しゅうけい)によってまちづくりを行う小布施町が、どのような経緯で今の状況に至っているのか。
小布施町に「まちづくり研究所」を立ち上げた東京理科大学の教授が、小布施流まちづくりを内側から描く・・・。
まさに奇跡と呼べるような、ラッキー要素がいくつも重なった状況で小布施の修景地区が形成されたことが判る。
幕末に葛飾北斎が何度もこの地を訪れ、多くの作品を残してくれていたこと。
建築物単体ではなく、それと連続する空間をも考慮に入れて設計する建築家:宮本忠長が近隣地区の出身だったこと。
町長が修景地区の住人だったこと。
五者会議と呼ばれる修景地区に住んでいる住人は、もともと公共に対する意識も高く、それなりに所得も高い人達だったこと。
・・・などなど、この地域独自の条件の基でまちづくりがなされてきた。
他の地域のまちづくりに携わる人たちが、小布施を見習って似たようなことをしようとしてもダメだろう。
本書は、ドキュメンタリーとして読むもので、まちづくりの教科書にはならない。おそらく著者もそんなことは考えていないだろう。
地域デザインやまちづくりを志す若い人たちの動機付け、意識付けするのに良いのかもしれない。
いや、観光ガイド本として読むのがイイかも。少なくとも私はこの地に行ってみたいと思った。