『ジェイコブを守るため』 | 本だけ読んで暮らせたら

『ジェイコブを守るため』

DEFENDING JACOB (2012)
 
『ジェイコブを守るため』  ウィリアム・ランディ/著、 東野さやか/訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ(2013)


ミステリ小説(特に海外のミステリ小説)が、単なる謎解きだったり、犯人探しを楽しむためだけのエンターテイメント作品ではなく、いわゆる純文学作品との境界が曖昧になってきている、と云われて久しい。

海外ミステリの場合は、そもそもそのようなジャンル分けすらないのかもしれない・・・。

この作品は、そういったことを強く感じさせる。


読み始めから感情にさざ波がたった。読み進めていっても、その小さなザワツキ感は一向に消えない。

優れたミステリ作品にほぼ共通していると云っていいだろう、イントロ部を読み始めたときに感じるザワツキ。だが、大抵の作品は、読み進めてゆく過程で、プロットの進行とともに、この感覚は消えてゆく。物語環境や語りに慣れてゆくから。


だが、この『ジェイコブを・・・』の場合、この最初のザワツキ感がどこまでも読んでいっても消えない。300ページを超えても、400ページを超えても消えない・・・。

どうにも違和感が残り続けるのだ。巧みな語りなのに、その語りにどうにも釈然としないモノを感じるのだ。

そして、500ページでザワツキ感がピークに至り、その理由がわかり、10ページ後を読んだときに腑に落ちるモノを感じるのだ。 そうだったのか、と。


クライマックスはズシン!ときた。 衝撃といってもいいだろう。

子供に対する父親と母親の愛情の表現の違い、その究極が表された作品だった。

お薦めです。