『掠奪の群れ』 | 本だけ読んで暮らせたら

『掠奪の群れ』

HANDSOM HARRY (2004)

『掠奪の群れ』  ジェイムズ・カルロス・ブレイク/著、 加賀山卓朗/訳、文春文庫(2008)

J・C・ブレイクの第3翻訳作品は、またしても硝煙にまみれた犯罪組織の友情の物語(?)。


前半部は、主人公ハリーが収監され、脱獄するまでが描かれる。この展開のなかでは、主にハリーの性格描写と、ハリーが監獄で出会い、やがて徒党を組むことになる囚人仲間達についての描写にかなりのページが割かれている。

主人公ハリーの一人称語りなのだが、自分自身を語る様があまりにも客観的過ぎて、ここまでの話では、いったい誰が主人公なのか良く判らない。誰も彼もが同じような性格の犯罪者で、見分けがつけ難かった。

似たような人物の描写と単調なプロットではあったが、やがてはコレが伏線となって活きてくるような展開が後半部に待ち受けているのだろうと思いながら、少しジリジリ感じながらも我慢して読む。抑揚の無い話だ、と思いながら・・・。

やたらと銀行を襲う後半部であったが、その襲撃パターン、逃走パターンはあまり変わり映えすることがない。最後までフラットな物語だった。


この物語、実在した人物達が実際に起こした事件をベースにしているとのこと。
この世の大抵の出来事は淡々として進んでゆくのだろうから、実際の犯罪というものも、傍から見ればさしてドラマチックなものではないのだろう。

主人公ハリーの心情は、どんなシチュエーションにあっても、ほとんど変化がみられず、最後まで一様だった。登場人物というよりもナレーターといった感じだった。作者が、ハリーは非常にクールな人物、という描写を狙ったのなら、成功だったかもしれない。ただ、物語として成功したとは思えない・・・。


それにしても、最後の一行は笑っちゃったネ(失笑)・・・。ハリーのクールさが台無しだ。



前の2作の方が、今作よりもズット良いです。

無頼の掟

荒ぶる血