『禁中御庭者綺譚 乱世疾走』 | 本だけ読んで暮らせたら

『禁中御庭者綺譚 乱世疾走』




『乱世疾走 ―禁中御庭者綺譚』  海道 龍一朗/著、 新潮文庫(2007)


前作 『真剣』 のとんでもない面白さには敵わなかったものの、この作品も途中に一息入れることなく(他の本へと脇目することなく)読み終えることができた。 うん!この作家の力量は確かだ。


戦乱、下克上の時代。世の中が混乱している時代。織田信長という時代の寵児が登場した!?

憂う帝。天皇の耳目となり、信長の動静を探るために集められる5人の若き異能者たち。


5人のメンバーを集める場面。

それぞれが様々な過去をもち、一般世間(集団)からは疎まれながらも、見ている人は見ている・・・そんな、強烈な個性と特殊な才能を持つメンバーが集められる。

集まった5人は互いに反目する。どうしても受け入れられない奴がいる・・・。

そんな中で、任務を与えられる。

訪れる絶体絶命のピンチ。協力しなければそれを脱することはできない。。。苦難に遭って、発揮するそれぞれの能力と気性。それを認め合い、いつしか仲間として結束してゆく5人。


まったくもって、ベタで、ありがちなプロットだ。だが、夢中で読んでしまう。降りるべき駅も通り越してしまう・・・。たいした大活劇だ!


こういう活劇は、いかに特異なキャラを創り、魅力を与えるかに掛かっている。前作の登場人物たちにも重要な役割を与えつつ、新たな5人の主人公達にも充分な“異能”を与えている。その点でもこの作品は成功している。


ただ・・・、それでも、どうしても、主人公たちを凌いでしまう織田信長の強烈な個性が目立つ。

この作品でも、織田信長を凌ぐ登場人物は見当たらなかった?? 御庭者たちと信長が遭遇する幾度かの場面では、圧倒的に信長のキャラの方が立っている。

良し悪しはともかく、この人物は、現代人にとって最大の歴史ヒーローなのか!?



この作品は、あの有名な“金ヶ崎の退き陣”で終わっている。ってことは、続編が作れそうだ。その際には、5人の御庭者たちの信長を凌ぐ“キャラ立ち”に期待したい!