『非線形科学』
やっと、今頃読み終わった・・・
集英社新書としては字数も多く、内容も濃密。立ち読みで済ませられるモノが多い集英社新書らしくない。。。
著者は云う。ごく平易な言葉、日常の言葉で、一般人に現代科学を伝えたい。どこまで伝えられるか挑戦してみた。・・・と。
しかし、この本の内容、(新書としては)決して易しくはない。どちらかと言えば難しいんじゃないかと思う。
(かつての科学技術系新書にはこの程度の内容のものは多かったが・・・)
職業柄、“非線形解析”とか、“非線形な挙動”というような言葉をよく聞き、まれに使ったりもすることがあるので、この本を読むことに然したる抵抗感はなかったが、それでも時折、じっくりと読み込まなければ理解できないことも多かった。
非線形科学で使われる用語、例えば、“カオス”とか、“ゆらぎ”とか、“同期”とか、“ネットワーク理論”だとか、“パターン形成”などといった言葉は、最近では日常の中にも頻出するので、興味のある人は読んでみたらいかがだろう。
決して易しくはないと思うが、この本以外の類書に比べれば易しいし理解もしやすい。
これまでの科学が、物事を構成要素に分解し、その微小な構成要素について突き詰めていく学問であり、それ故に日常世界の現象や一般人の感覚から遠く隔たった事象に拘ってきていたとしたら、非線形科学はそれらとは対称にある・・・そうだ。
非線形科学は、それほど物事を精緻に分解しなくとも、個々の要素については本質を抑えておけば、そこそこの理解であってもよい。個々の要素が大量に集まった状態の振る舞いは、個々の要素を単純に足し合わせただけの挙動になるとは限らない。画一的ではない、もっと複雑な挙動を示すことがあり、その挙動は日常の現象や我々の感覚に合致した“生の”あるいは“生きた”物事の動きを表す・・・そうだ。
章構成は ↓こんな感じ。
まえがき
プロローグ
第一章 崩壊と創造
第二章 力学的自然像
第三章 パターン形成
第四章 リズムと同期
第五章 カオスの世界
第六章 ゆらぐ自然
エピローグ
参考文献
さくいん
総論的な内容は、まえがき、プロローグ、第一章、第二章、そしてエピローグに書かれている。
概念としての“非線形科学”を掴みたい方は、その部分を読めばOK。
第三章から第六章は個々の非線形現象を示す事例に関すること。
さてさて・・・、20世紀末、科学の無力さを認識し始めた世界。
はたして今世紀、「非線形科学」が世界に新たな光を当てることのできる科学となるのか?