『文政十一年のスパイ合戦』 | 本だけ読んで暮らせたら

『文政十一年のスパイ合戦』


『文政十一年のスパイ合戦』 日本推理作家協会賞受賞作全集 73   秦 新二/著  双葉文庫(2007)  
初出は1992年だから、15年も前の作品。


この本、“日本推理作家協会賞”なんて云う肩書きが付いているけど、(フィクションの)ミステリーではありません。歴史謎解きノンフィクション。

確か、 『WEB本の雑誌』の8月のお薦め文庫 にもエントリーされていた作品。

凄い! 読んで損はないです。



鎖国を国是としていた江戸幕府にあって、例外的に認められていた九州長崎での阿蘭陀(オランダ)との貿易。

1823年、長崎の地に自ら臨んで赴任してきた、医師でもあり自然科学者でもあったドイツ人のシーボルト。

そのシーボルトが国外退去処分となった、いわゆる「シーボルト事件」。

この本は、歴史におけるこの事件の“表”と“裏”の側面を説明すると共に、さらに、この事件の“奥”に潜む事柄をも炙り出す。


シーボルトは、科学・博物調査の一環として、日本国内の植物や織物、雑貨など、ありとあらゆる物をオランダに送った。さらに、当時ご禁制であった日本地図、江戸城・将軍の居城の内部を詳らかにした図絵、そして、間宮林蔵が探検・計測し描いた「黒竜江中之洲并天度」=樺太がユーラシア大陸とは地続きではない島であることを示した地図、などをも国外に持ち出そうとした。

そして?・・・・、幕府によって国外退去処分とされた。

著者は、シーボルトが当初から医療知識の普及・科学調査のためだけに来日したのか?疑問に感じていたという。

そんな著者が、オランダ、ドイツ、インドネシアなどで新たに発見し、整理・解読したシーボルト直筆の手紙や膨大な資料を基に、これまで通説として罷り通っていた「シーボルト事件」の解釈や位置付け・意味付けを、まったく引っくり返してしまう。


この本のタイトルからも、シーボルトがスパイであったことが示唆されているので、それだけでは読者の予想の範囲内であり、これだけだったら並みの歴史書だ。実際この本では、シーボルトがスパイであったことが前半部で明かされる。

だが、この本の驚くべき所は、この先に待っている・・・・。


新資料の解読によって明らかにされることとは・・・・

シーボルト来日の真の目的とは何か?

スパイ・シーボルトに対して幕府中枢が採った行動は?

その幕府中枢を動かした動機・目的・狙いとは? そもそも幕府中枢にいた人物とは?


お薦めです!



【 追 記 】

確か、高校の時の修学旅行で、シーボルトが残していった?とか云う、ピアノだかオルガンだかを、萩で見た覚えがあるが・・・?

はたして、私の記憶は正しいのか???