『 灯 台 』
THE LIGHTHOUSE (2005)
久しぶりにP・D・ジェイムズのダルグリッシュものを読んだ。
イギリスの伝統的本格ミステリー。大御所ジェイムズ女史御歳85才のときの作品。
VIP御用達の孤島の保養地で起こる殺人事件。被害者はイギリス文学界の大御所。容疑者は島のスタッフと滞在客を含めて十数人。
事件を穏便に解決したい行政官僚機構=ニュー・スコットランドヤードが島に送り込んだのは、アダム・ダルグリッシュ警視長、ケイト・ミスキン警部、ベントン・スミス部長刑事の3人。
ダルグリッシュ達が交錯する人間関係を一つひとつ解いて行く過程は相変わらず入り込んで読んでしまう。
3人の捜査官たちの個性が非常に良く書き分けられていて、それが物語の展開にも重要な要素となっている。キャラクターとプロットが必然的に絡み合う作品・・・ん~、さすがイギリス・ミステリー界の女王だ。巧すぎる。
クライマックス・・・、アダム・ダルグリッシュ、ケイト・ミスキン、ベントン・スミス、この3人のそれぞれの感情が表出する場面では、読んでいる方の感情も動かされる。特に、ベントン・スミス部長刑事の活躍の仕方が気に入った。
一時の純文学めいた、あるいは哲学っぽい硬い文章は影を潜めていて、非常に読みやすくなっている。安心して、落ち着いて読める作品。