『十兵衛両断』 | 本だけ読んで暮らせたら

『十兵衛両断』


『十兵衛両断』 (2003)   荒山 徹/著、   新潮文庫(2006)


表題作の「十兵衛両断」をはじめとし、「柳生外道剣」、「陰陽師・坂崎出羽守」、「太閤呪殺陣」、「剣法正宗溯源」、の5つの物語からなる連作短編集。

久しぶりに時代小説、それも、伝奇モノを読んだ。 柳生一族の陰謀、である。(^~^)


江戸に幕府が成って初期の頃・・・・、徳川将軍家を支える覇王の剣・・・“柳生新陰流”。そして、将軍家に仇なすものを権謀術数の限りを尽くして誅滅する“裏柳生”・・・。

時代劇などに登場する柳生の面々・・・、柳生石舟斎、柳生但馬守宗矩、柳生十兵衛、柳生列堂、・・・・・・

柳生と聞くと、↑↑ こんなところを想像する・・・かな?(昔のドラマや映画にダイブ毒されている・・・??)


この小説、これらお馴染みの柳生の面々が闘う。

ただ、この小説が既往の映画や小説と異なるのは、柳生の敵が韓人であることだ。この小説の柳生たちが戦うのは将軍家に逆らう外様大名ではなく、朝鮮の妖術師や剣士である。


著者、荒山氏は朝鮮の歴史や文学を、韓国に留学して学んだとのことだ。それだけに朝鮮史や日本と朝鮮との関係についてかなり詳しいらしい。


秀吉が行った朝鮮出兵。 自国を蹂躙された側は “恨” を抱く。

秀吉の死後、天下を握った徳川家康は、朝鮮との関係を築き直す・・・・・朝鮮通信使節。・・・が、朝鮮側には様々な“恨”を抱き、今は亡き秀吉に、徳川家に、柳生家に、日本に、仇を成そうとする。


秀吉の時代に朝鮮に渡った柳生がいたり(「太閤呪殺陣」)、

朝鮮にも陰陽師みたいな輩がいて、そいでもって、柳生十兵衛が妖術師の術にかかって大変なことになってしまって、復讐したり(「十兵衛両断」)、

その十兵衛が実は・・・・・だったり・・・・・(「剣法正宗溯源」)。


ま~、なんとも奇想天外、ブッ飛んだ物語だ。

そもそも、伝奇小説ってのは、ブッ飛んだ物語のことなんだろうけど、この小説のブッ飛び方はチョット新鮮だった。今までにはないブッ飛び方だった。

お薦め。