『時間の分子生物学 時間と睡眠の遺伝子』 | 本だけ読んで暮らせたら

『時間の分子生物学 時間と睡眠の遺伝子』

時間の分子生物学

 粂和彦/著、講談社現代新書


前半は生物時計(体内時計)の話。後半はその生物時計も大きく関係する睡眠についての話です。


およそ地球上に生息する生命のほとんど(全て?)が、体内に時計を持っているとのことです。

生命が持つ、あるいは感じる、24時間周期や1年周期などのリズム。

なぜ、生物時計が必要なのでしょうか?


次に必要なことを準備するため.

将来を予測して活動できる生命は、予測できない生命に対して、有利に生き残ることが出来るでしょう。そのため、現存する生命ほとんど全てに生命時計が内在されている、というのは最も理解しやすい理由です。


季節を知るため.

冬に子どもを生んでも食物がなくては生き残ることが出来ません。季節を知ることはそれだけ重要で、そのために生物時計が必要です、というのも頷ける話です。


方角を決めるため.

方位と時刻が一対一に対応することから、ある時点の過去と現在の太陽の位置を知れば、一定時間に太陽がどれだけ移動したかで方角を知ることができるため生命時計が必要となる。渡り鳥などには必須の能力です。


驚くことに、前世紀の最後の数年間で、生命時計のメカニズムや、そのメカニズムを支配する遺伝子とその個々の働きまで、生命時計に関するほとんどのことが解明されてしまったとのことです。


しかし、この本の後半部・・・

もう1つの主題である“睡眠”、この睡眠については現在でも謎だらけであるという、まったく対照的な内容となっています。

何故、人間には睡眠が必要なのか? どのくらいの時間眠るのが良いのか?

こういった昔からの疑問に対しては未だに客観的・科学的に答えられるところまでには至っていないようです。こういうことについては、各人の経験的な良し悪しから脱していない、というのが現状のようです。

ただ、眠り病ともいわれる「ナルコレプシー」という病気の原因遺伝子の発見を契機に、睡眠に関する研究の突破口がみつかってきているとのことです。


講談社出版文化賞科学出版賞を受賞しただけあって、誰にでも読みやすく書かれています。