『数学をつくった人びとⅠ』
E・T・ベル/著、田中勇・銀林浩/訳、 ハヤカワ文庫
2年程前、早川書房で文庫化された本です。ハヤカワ文庫ではⅠ、Ⅱ、Ⅲの3分冊で構成されています。出版されたときに、一気に3冊とも買いました。
実は、最初にこの本を読んだのは、だいぶ昔、たぶん高校生の頃だったと思います。その頃はハードカバーの単行本で2分冊だったかと思います(このあたりの記憶はイイカゲンです)。
文庫版を再読した際は、もちろん中身についてまったく覚えていませんでした。読み始めてしばらくしても、かつて読んだことさえ忘れていました。読み進んでいくうちに、なんとなく、“これ、いつか読んだかもしれない”とだけ思い出しました。
第Ⅰ巻と第Ⅱ巻はきちんと、最初から最後まで読み通しました。第Ⅲ巻は途中で読むのを止めてしまって、今に至るまで読了していません。
ただ、数学がどういうものかとか、数学者がどのような人達であるかは大まかに解ったつもりです。
数学は、物理法則のように発見されるものではなく、人の都合の良いように造られるもの、だということです。
自然科学分野の中のKing、それが数学なのではありません。数学は、人の情緒によって創られる芸術、あるいは文学の一種だということです。
そして、数学を創った人達は、皆が皆、天才なのではありません。まさに、世の中の平均的な傾向を反映するかのように、様々な能力、性格をもつ、一人ひとりはどこにでもいるような人達だということです。(それでも明らかに天才といえる人が多いような気もしますが・・・)
この第Ⅰ巻に登場する数学者の中では、何と言ってもオイラーの章が印象深いです。
人類の至宝、オイラー公式:exp(iπ)=-1を創った人です。オイラーの創ったexp(iπ)=-1がなぜ、人類の至宝であるかは、『オイラーの贈り物』(吉田武/著、)という超名作に記されています。
私の普段の仕事でも、必ずと云って良いほど、オイラーのお世話になっています。
この本は、数学者のヒトトナリや、どのような動機付けの下に数学の定理が創り出されてきたのかを知りたい人にはお薦めです。