『ノラや』 | 本だけ読んで暮らせたら

『ノラや』

← 私が持ってるのとカバーが違う
『ノラや』  内田 百閒/著、 中公文庫(1980初版)、(1997改版)、(2008改版10刷)

庭に紛れ込んでいた野良の子猫の面倒をみるようになり、いつしか座敷にもあげるようになり、「ノラ」という名前までつけて情愛深くなってしまった著者とその奥方。

1年半ほどいっしょに暮らしていたが、ある日庭から外に出て行ったきり戻らなくなってしまったノラ。

似た猫を見たという知らせを聞いては探し回り、猫探しのビラを何千枚もつくり、新聞への折込まで頼んだりするが、ノラは戻ってこない。

後半部は、ノラが居なくなった後、またもや居ついた別の猫「クル」のことについても描かれている。こちらは5年半の間、内田家に居ついて病死する。

この本、いなくなった猫を想い、ただただその悲しさ・寂しさを綴っただけのエッセイだ。

ノラとクルについての14篇のエッセイに計300ページもの枚数が費やされている・・・・・スゲー。


ことあるごとに居なくなった猫のことを想い出しては、いい年した爺さんが涙まで流して、声を上げて泣く・・・。それも何ヶ月も、何年も・・・。

それだけのことを綴った文章なのに、なぜか読んでしまう。読まされてしまう。

そんでもって、身近に猫がいてもイイな~なんて思ったりしてしまう・・・・・(当分は飼うつもりもないけど)。




ノラや―内田百けん集成〈9〉 ちくま文庫/内田 百けん