『疑似科学入門』 | 本だけ読んで暮らせたら

『疑似科学入門』



『擬似科学入門』   池内 了/著、 岩波新書(2008)


もちろん、書名は逆説的な意味で用いられている。


著者は、疑似科学の手口を述べ、どうしてそういった事が蔓延るのかを分析している。結局は、個々人が“考えること”、“正しく疑うこと”を続けることでしか対処できない、という結論は決まりきったことなのだが・・・。


著者の云う疑似科学とは、


(1) 科学的根拠のない超能力、オカルト、スピリチュアル、オーラ、占い、血液型、など、

  人の心理につけ込み、暗示を与えるもの。

(2) インチキ科学。ニセ科学。永久機関、ゲーム脳、マイナスイオン、水の記憶、などといった、

  いかにも科学っぽい言葉を用いて表している事物。

  その言説は表面的で薄っぺらな誤った理屈モドキで構築されている。


これらだけなら、今までの この類の本(下記参照) でも注意喚起していた。


この本が新しいのは、


(3) 存在や挙動が「複雑系」であるために、その真偽が現在の科学では未だ確かめられない問題に対し、

  真の原因の所在を曖昧なままにした言説で一方的な結論、極端な結論を導く事物。

  例えば、地球温暖化問題、狂牛病・BSE問題、電磁波被害、地震予知、など。


といったことに対しても真摯に言及している点である。


(1)、(2)および(3)について、著者はそれぞれ、第一種疑似科学、第二種疑似科学、第三種疑似科学と称して、それぞれの疑似科学に対する処方箋を提示している。

読みどころは、第三種疑似科学に対する処方箋の部分。謙虚さがあり、バランスの取れた主張だと思う。


【 類 書 】
 『科学とオカルト』

 『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』

 『インチキ科学の解読法』