『思考の整理学』 | 本だけ読んで暮らせたら

『思考の整理学』


『思考の整理学』  外山 滋比古/著、 ちくま文庫(1986年)



名著。

動いている物体が、その運動を継続しようとする物理。慣性の法則。

これと似たようなことで、生理的な慣性や心理的な慣性がある、と著者は云う。

もともと静止したフィルムなのに、連続して映写することによって動きを感じさせるアニメーションや映画では、残像(残曳)作用という視覚の慣性を利用している。

これを、“生理的な慣性”だとすれば、心理的な慣性もあることに気付く、と著者は云う。

言葉の残像、文章の残曳、修辞的残像。外国語や難解な文書を辞書首っぴきで読むよりも、多少解らないことがあってもそんなものは素っ飛ばして、相応の速度で読むことによって、なんとなく全体がわかる。

論文などを書く場合も、パート・パートの構想や論理展開を十分に練って書くよりも、取り敢えず書き始めてみる。そして、勢いのままに書き終えてしまう。その後で再構成したり、細かい修正をする。その方が良いものが出来る事が多い。

と、著者は云う。

乏しい私の経験からしてみても、確かにそんなように思えるときがある。漠然と実感していることを、簡単で論理的な言葉にしてもらえると合点がいく。この本、優れた学者の仕事だ。



著者の経験談めいたことを、エッセイ風に書いている。押し付けがましくなく、マニュアルっぽくもない。

しかも、文章は簡単。だが、論理的。日本語のお手本みたいな文章だ。こういう文章は真似しよう!

内容とは関係ないけど、表紙のデザインも私の好み。


高校までの受動的な(?)勉強を終えて、大学に進む人。大学で勉強しようかな、と考えている人。

大学受験が終わって一息ついたら、読んでみてはいかがでしょう。