『列島創世記』
およそ6世紀頃までの日本列島の4万年分の歴史の概要が書かれている。
いや~、予想以上に面白かった。
考古学だけでは良く判らないかもしれないことに、心理学?or (and) ヒューマン・サイエンス?を適用(援用)しながら、縄文、弥生、古墳の時代に生き、暮らしていた人間たちの営みや文化・文明、はたまた生き方・死生観などを表出してみせる。
縄文人たちが何故あのような文様の土器を作り、ヤマト以前の人たちが何故かくも巨大な古墳を増築したのか? その理由が端的に、しかも、それなりの根拠をもって語られる。
人の感情や思想が形になる。ましてや、未だ文字を持たなかった時代、ヒトは自分たちの考えを物質や造形物によって表現する。
人より大きいもの、高いものを作るという理由には、見栄や虚栄心が反映されるし、それなりに財力や他人を使うための力(権限)がなくてはならない。自分(達)と他人を区分するためには、土器に描く模様を変えてみせたりする。より凝ったものを作るってことは、それだけ生活に余裕があったってことになる(生活に余裕が持てるようになる最大の要因はもちろん気候・環境である)。
それが、縄文時代だろうが、弥生時代だろうが、21世紀だろうが、同じホモ・サピエンスの考えることなら、大体が同じだろう! たいした違いは無いだろう! っていう前提に立って昔のこと(まだ文字のなかった時代のこと)を考えてみよう! というのが、この本の著者の考え方だ。
こういうのを「認知考古学」って云うらしい。
この認知考古学に基づく根拠が、科学的かどうかは私には判断できないが、それでも、こういった方法が採られること自体は面白いことだと思う。
なぜ歴史を学ぶのか、なぜ昔のことを知りたいのか、ということを考えた場合、おそらくは、そして結局は、我々は他人や自分という“ヒト” や “ヒトの考え” について知りたいってことだもんな。
今までの歴史書にはなかった、かなり思い切った解釈の本書。だが、その文章・文体は易しく、流れるよう。しかもそういった解釈をしたことに対する説明が判りやすく、そいでもって勢いがある。物語性もあって非常にイイ。
若くて、バイタリティのある(ように見受けられる)学者先生の書く文章は粋だ!
縄文時代、弥生時代、古墳時代・・・、同じ時期でも各地で出土するモノがまったく同じことはない。
ってことは、同じ時代でも、列島各地の人達が皆同じように暮らしていた訳ではない。同じ土器を作っていたわけでもない。同じものを食べていたわけでもない。そんなはずがない。
同じ時代の暮らしでも、地域によって、個々人によって、多様性が認められる。これまでにあちこちで発掘したモノからそんな当たり前のことを知る。そういったことがキチンと書かれているところもイイ。
専門家が読んだら当たり前の内容(?)なのかもしれないが、一般読者(の私)にとっては画期的な考察方法を用いた歴史書だと思う。 チョーお薦め!
2巻、3巻も出たんだよナ~・・・、読みたいナ~、でも高いナ~。。。