『さよなら僕の夏』
Farewell Summer (2006)
の続編。
実は、『たんぽぽのお酒』が描かれた55年前に本作の骨格もできていたらしい。
55年前、『たんぽぽのお酒』を出版する際に、第2部に相当したこの部分をカットしていたとのことである。
ブラッドベリは、両作を合わせた完全版を『青い思い出の山々』と呼んでおり、前半部の『たんぽぽのお酒』となった部分の原題は『夏の朝、夏の夜』だったそうだ。
さて、本作は、13歳の少年ダグラスと彼の弟や友人たちが、古い価値観を持つ(とダグラス達が思っている)町の老人たちと戦う物語・・・というのはではなくて・・・、
少年達と老人たちの反目を表面上に描きながら、両グループの中心人物であるダグラス少年とクォーターメイン老人との誤解と理解をメインテーマに据えている。
少年は老人の目の奥に自分自身を見る。
老人も少年を見て、自分の今後の人生を再発見する。
本作のベスト・シーンは、31章(p.162~)のクォーターメイン老人がもう一人の老人を相手に自身の心情を語る場面だ。ヒトが生きていく上での、恐らくは普遍の心情が描かれている(と思う)。
今作も主人公はダグラスなのだろう。だが、クォーターメイン老人といい、ダグラスの祖父母といい、老人の描き方が抜群にイイ作品だ。私のような中年読者としては、老人の方に肩入れしてしまう。