『さよなら僕の夏』 | 本だけ読んで暮らせたら

『さよなら僕の夏』

Farewell Summer (2006)




『さよなら僕の夏』  レイ・ブラッドベリ/著、 北山克彦/訳、 晶文社(2007年)

『たんぽぽのお酒』

の続編。


実は、『たんぽぽのお酒』が描かれた55年前に本作の骨格もできていたらしい。


55年前、『たんぽぽのお酒』を出版する際に、第2部に相当したこの部分をカットしていたとのことである。

ブラッドベリは、両作を合わせた完全版を『青い思い出の山々』と呼んでおり、前半部の『たんぽぽのお酒』となった部分の原題は『夏の朝、夏の夜』だったそうだ。


さて、本作は、13歳の少年ダグラスと彼の弟や友人たちが、古い価値観を持つ(とダグラス達が思っている)町の老人たちと戦う物語・・・というのはではなくて・・・、

少年達と老人たちの反目を表面上に描きながら、両グループの中心人物であるダグラス少年とクォーターメイン老人との誤解と理解をメインテーマに据えている。


少年は老人の目の奥に自分自身を見る。

老人も少年を見て、自分の今後の人生を再発見する。


本作のベスト・シーンは、31章(p.162~)のクォーターメイン老人がもう一人の老人を相手に自身の心情を語る場面だ。ヒトが生きていく上での、恐らくは普遍の心情が描かれている(と思う)。


今作も主人公はダグラスなのだろう。だが、クォーターメイン老人といい、ダグラスの祖父母といい、老人の描き方が抜群にイイ作品だ。私のような中年読者としては、老人の方に肩入れしてしまう。