『泥棒は深夜に徘徊する』 | 本だけ読んで暮らせたら

『泥棒は深夜に徘徊する』

THE BURGLAR ON THE PROWL (2004)



ローレンス・ブロック が描く、泥棒バーニー・ローデンヴァーを主人公としたシリーズものの第10弾。

一番最初の作品はかれこれ30年も前に出版されたとのこと。30年で10作。


この作家が描く別のシリーズ作品の主人公マット・スカダーは着実に歳を取ってきているが、このシリーズ作品の主人公バーニーは歳をとらない。


物語の内容はたいして深くない。・・・というより浅い。軽い。もう、ふわふわ。そこがイイんだけど・・・。


主なレギュラー出演者は3人。

主人公のバーニーは、鍵を破る才能に関して自他共に認める凄腕であり、生まれついての泥棒であることを自覚している。なぜ自分が泥棒をするのか? 彼自身は、決して真っ当ではないと思っていながら、止められない。言い訳をしない。

バーニーの泥棒としての才能を認めるのが、ニューヨーク市警刑事のレイ・カーシュマン。これまでバーニーを利用して、自らの犯罪検挙の手柄を得てきた腐れ縁の刑事である。
バーニーの友人のキャロリンは、バーニーが営む古書店と同じ通りにあるペット美容院の美容師で、レズビアン。このシリーズでの物語展開の多くは、バーニーがキャロリンと行う会話を通して明らかになっていく。

ランチ・タイムや(かたぎの)仕事を終えた後のバーで一杯飲みながら繰り広げられるバーニーとキャロリンの会話は軽妙であり、クスッと笑えるフレーズがあちこちに出てくる。そこがこのシリーズの売りでもある。

まァー、“軽妙な会話が満載!”といえば聞こえはイイが、言い換えれば戯言(たわごと、ざれごと)のオンパレードである。正統なミステリではないが、それはそれ、面白いだけのミステリというのもアリである。


バーニーが忍び込んだ先、目を付けた屋敷で必ず起きる殺人事件。

毎度まいどバーニーが巻き込まれる殺人事件に対し、錠前破りの腕とインテリジェンスと戯言を武器に乗り切る偉大なワンパターン作品。


私が唯一欠かさずに読み続けているコージー・ミステリです。

『泥棒は深夜に徘徊する』  ローレンス・ブロック/著  田口俊樹/訳  ハヤカワ・ミステリ(2007)