『謎解き 広重 「江戸百」』 | 本だけ読んで暮らせたら

『謎解き 広重 「江戸百」』



謎解き 広重「江戸百」 』  原信田 実/著  集英社新書ヴィジュアル版 (2007)


広重が描いた江戸浮世絵風景画の傑作シリーズ「名所江戸百景」、略して「江戸百」。浮世絵風景画の連作として、この時代の庶民の人気を博したそうだ。

しかし、これらの絵は、ただ美しいだけの風景画ではない。


この本の表紙絵にもなっている“浅草金龍山”の近景・遠景に描かれた対象物と、この絵が描かれた頃に起きた出来事を結びつけた時、そこに一つの仮説が、この絵が描かれた切っ掛けが浮かび上がる。著者の原信田氏の頭に浮かんだこの仮説を、別の絵にも当て嵌めることができたなら・・・・・。

著者は第1章で仮説の発想について記し、第2章では「江戸百」が描かれた時期、“安政”という時代の世相・世情・風潮や幾多の自然災害と、庶民の「世直り」の願望について説明する。そして、第3章から第5章では、45編の絵を挙げて、それぞれの絵に込められたメッセージを浮かび上がらせる。

それぞれの風景画には、広重ら製作側が含めた意図や込められた意味というものがあった。幕府によって表現の自由を規制されていたこの時代、それぞれの絵にはコード化された、一種ジャーナリスティックなメッセージ・ニュース性を混入したものであったのだ。



著者の云う仮説に対し、最初はホントかな?という疑問があった。しかし、一つひとつの絵に対する解説を読み進めるうちに次第に納得していく。。。

当初、「江戸百」シリーズの全ての絵がカラーで掲載されているページをパラパラめくりながら、浮世絵の美しさ・繊細さ、構図の大胆さに目を見張っていただけの私が、テキストの中身についても次第に惹かれていった。

新書サイズのビジュアル本としての価値も然ることながら、歴史謎解き本としてもメチャクチャ面白い。

お薦めです。