『いま活断層が危ない 中部の内陸直下型地震』
- 『いま活断層が危ない―中部の内陸直下型地震』 安藤 雅孝・田所敬一・林能成・木村玲欧/編著
- 中日新聞社(2006)
名古屋大学地震火山・防災研究センターの学者さん達が執筆・編集された一般市民向けの啓蒙書。
まず最初に、日本に地震が起こる理由を冒頭で簡単に述べている。
次に、これまで中部地方に被害を及ぼした地震のデータをカラー・マップで掲げている。
そして、この本の凄いところが次の点である。
中部地方に集中する大規模な活断層一つひとつを挙げ、それら一つひとつの活断層に関して数ページを割いて、その活断層が動いた際に、どの範囲で、どの程度の震度となるかを予測した地震動予測地図を掲載している点である。
プレート同士の衝突を起因とする海溝型の地震の活動周期は相対的に短い。短いといっても、数十年~数百年単位である。
一方、内陸の活断層が動いて起きる地震の周期は長い。数千年単位であるものが多いという。
内陸の活断層の成因だって、元を糺せばプレート同士の衝突に至るわけだが、長年掛けて岩盤内に蓄えられてきた「ひずみ」が岩盤の弱いところを起点として破壊し、地表にまで達し、地盤を動かし、傷跡として残った所が“断層”となっているわけだ。
また、単に活断層といっても、“歴史”として地震の起こったことが記録されている活断層もあれば、過去の文献にはその活動とおぼしき記録が見当たらない活断層もある。
歴史(人間の手によって文字として残された記録)には無くとも、考古学的に発見されている地震の痕跡もある。最近では、こうした考古学的に発見された地震の痕跡から、人による記録が残されなかったほど過去にまで遡って、その活断層が活動した時期を推定することが可能になりつつある。
この本では、歴史上その活動が認められたことのある活断層と、歴史時代に大地震を起こしていない断層のいずれについても採り上げている。
歴史時代に活動していないということは、それだけ長期に渡って「ひずみ」を溜め込んでいることになるかもしれない。そういった断層の方が今後活動する確率は高いかもしれないし、また、一度動けば大きな地震を発生させるかもしれないのだ。こちらの方が、より注意を要する断層かもしれない・・・。
この本の第3章では、「大地震直後からの知識」という項目にかなりのページを割いている。
地震を止めることはできない。地震は必ず起こる。
そのことを前提に、災害から身を守り、乗り越えるための様々な知識・・・・・それらについて、地震学者さん達が提唱することは聞いておいたほうがイイ。ところどころに織り込まれた学者たちの“コラム”も傾聴に値する。
繰り返すが、地震に関する詳しい知識を持たない一般の人向け。読みやすく、判りやすい。