『系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに』 | 本だけ読んで暮らせたら

『系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに』

系統樹思考の世界

三中 信宏/著、 講談社現代新書



オモシロかった!



最近、私の仕事の分野の中でも、原因とそれから生起される数パターンの現象(イベント)の分岐を想定したロジック・ツリーやフォールト・ツリーなどという系統樹の一種(?) を作成し、それらの分岐した現象が発生する確率を想定・推論し、最終的にそれら個々の確率を乗じた結果として現れる大事故や災害の確率を算出するようなことが行われつつある。

また、数次元の解空間の多峰性問題(この本では、“八ヶ岳型”と云っていた)における最適解(もっともらしい解)の探索なんてことも時折やることがあるが、それが、この本で書かれていた“最適系統樹の探索問題”と同じだとはネ・・・。どこの世界でも同じようなことしているんですネ。

なんか親しみを感じちゃったな。


と、私でも思うように・・・・、


この本では、様々な分野、理系・文系を問わず、「系統樹思考」なるものの便利さ、このような視点を得ることのオモシロさを教えてくれている(?)のだと思う。




第1章では主に、「歴史」は科学としての対象となり得るのか?、について議論し、著者としての結論を述べている。

ここでは、“アブダクション”という推論様式・言葉を教えてもらった。なんか、いい言葉だ・・・。


第2章では、“系統樹”、“系統樹思考”という言葉の意味や定義みたいなことを述べている。それとこれらの歴史的な変遷。


第3章では、系統樹の推定方法について多少具体的に述べており、私にとってはこの章が一番オモシロかった。


第4章では、“系統樹”、“系統樹思考”がいろいろな分野で使えることの例を示すとともに、今後の発展性についても触れている。


第1章の前にはプロローグが、第2章と第3章の間にはインテルメッツォが、最期にエピローグが記されているが、これら3箇所の文章には、著者の来歴の一部や、ものの感じ方なども載っていて、私個人としては非常に興味深く読めた(このヒト、文章が上手!!)。


お薦めです。