『理系白書』 | 本だけ読んで暮らせたら

『理系白書』

理系白書 この国を静かに支える人たち

毎日新聞社科学環境部/著、 講談社文庫



以前から読んでいる毎日新聞の元村有希子記者のblog。

その元村記者がキャップとしてまとめている「理系白書」。その文庫本。


昨日出張の往復の電車の中で一気読みした。W杯テレビ観戦による寝不足解消のため、車中では眠ろうとしたのだが夢中で読んでしまった。



私自身、この年になってくると、理系だ!、文系だ!、などと言っている事自体が少々恥ずかしくなってきているが、それでもやはり、どちらだ?と問われれば、キッパリと“理系です”と答えるだろう。


子供の頃から“理系”の人間になると決めていた(あるいは職人)。少なくとも事務仕事(特に他人の金の勘定をする仕事)は絶対しない!と決めていた。(今のところそれだけは実現しているナ・・・。)

そして現在、おそらく、“理系” というカテゴリに属している自分に満足しているんだろうナ。チッポケな満足感だが・・・。



この本の最初の方で、一般世間では理系の人間は文系の人間に比べて社会的評価が低い傾向にある、などということが書かれていた。大学卒業後の生涯年収や、就いた役職などのデータを載せて比較している。役職はともかく、理系の方が生涯獲得年収が少ないなんて・・・、ホントかよ? と疑ってしまう。

銀行屋や証券屋ってそんなに給料もらえるのか???

まっ、給料なんてのは、仕事で得るインセンティブのうちの一部にしか過ぎないけどな。決して給料の良し悪しだけで仕事を選ぶわけではない。

↑多かれ少なかれ、これと似たような考え方をするのが、それこそ“理系”人間なのだろう。案外、理系の人たちは、社会的な評価が低いことを気にはしていない・・・かもしれない。社会的な評価よりも、自分が楽しければイイ、満足できればイイ、価値観を共有してくれる人間に評価されればいい、と思う人間が多いのだろう。私もどちらかというとそっちの方だ。

要は、理系と文系の違い、その最大のものは価値観の違いだ(と、私は思っている)。



さて、この本の中身を列記しておこう。


第1章 文系の王国

  上述したように、日本は文系の人間に有利なようにできている、ということを云っている。

第2章 権利に目覚めた技術者たち

  青色発光ダイオードの中村さんを始めとするスーパー・エンジニア達の逆襲が始まった?

第3章 博士ってなに?

  理系では多い博士号取得者達の処遇。日米比較も。

第4章 教育の現場から

  いわゆる理科離れ、学力低下問題について。

第5章 理系カルチャー

  オウム真理教の中枢に多くいた理系人間たち。理系とオタク。など

第6章 女性研究者

  どこの世界も同じなのだろうが、研究者も男と女では扱われ方や処遇に差別がある。

第7章 失敗に学ぶ

  生命や財産に及ぶような失敗でない限り、あまり目くじら立てるなよ、と云いたいんだ。

第8章 変革を迫られる研究機関

  独立行政法人化、大学発ベンチャー、産学連携などについて。

第9章 研究とカネ

  そのまんま。

第10章 独創の方程式

  独創的研究が少ないといわれる日本。何故か?本当なのか?について。

第11章 文理融合

  いつの時代も言われる理想論。



この本では、理系の人間達が持つ価値観に対してはあまり言及していない。

文系の人間との価値観の違い、それがどの様に形成されるのか、ということについては、やはり幼少期、少年期の環境がモノを云う、ということが第4章で触れられていた。
しかし、その価値観が形成された後の両者の行動様式の違い、そういったことについても突っ込んだ記事にしてもらえると嬉しい。


「理系白書」と元村記者 、今後も期待しちゃいます。