『銃・病原菌・鉄』 (その1) | 本だけ読んで暮らせたら

『銃・病原菌・鉄』 (その1)

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

ジャレド・ダイアモンド/著、 倉骨 彰/訳、 草思社



『文明崩壊』  とは順番が逆になったが、こちらの作品も読み出した。



イントロダクションから引き込まれる。著者が抱いてきた疑問点を示し、読者をそこへ導く。その展開力が凄い。


異なる地域で、異なる民族がそれぞれに歴史の経路を辿ってきた。しかし、その経路は一様ではない。

著者ダイアモンドはそこに焦点を当て、様々な“何故”を提示し、それに答えていく。


その中でも大きな “何故” は次の点に集約される。


■何故、現代世界は不均衡な状態にあるのか?

■何故、人類史は地域によってその発展の仕方が異なるのか?


著者ダイアモンドは、「それは偶然ではない」、という。人類史の発展には大きなパターンが存在する・・・と。



第1部の最初の物語は、紀元前1万1千年に遡る。

最終氷河期が終わり、完新世が始まったこの時期から人類は徐々にその進化を加速させる。しかし、その進化の仕方には大陸ごとに差異が生じる。

アフリカ大陸に誕生したホモ・サピエンスが、ヨーロッパ・ユーラシア大陸から北アメリカ大陸を経て、南アメリカ大陸の南端に到達したのが、およそ紀元前1万年頃だといわれる。誕生から各大陸へと進出するまでの数百万年の間、ヒトは狩猟採取により生き延びてきた。その間、ヒトはいくつかの段階に渡って躍進を遂げてきた。石器の発明や言葉の使用などなど・・・。

しかし、人口が爆発的に増加し、“社会”と呼べるシステムが生じるような大躍進が起こったのは、やはり、紀元前1万1千年以降の地球の温暖化に伴う。

そして、その後の1万3千年の時を経た現代社会を見てみると、富める地域とそうでない地域が存在している。最初にヒトが誕生したアフリカ大陸に暮らす人々は何故富める民族とならなかったのか?

何故、ヨーロッパ人が南アメリカの人々を征服するような圧倒的な文明を発展させることができたのか?何故、南アメリカ人がヨーロッパ人を征服したのではないのか?


何故、一方の大陸の文明が他の大陸の文明を凌駕しうるほどの不均衡が生じたのか?

第1部では、『銃・病原菌・鉄』という凝縮した表現によって、その直接的な要因を述べている。


そして、不均衡を生じさせたそもそもの根源的な要因については、第2部 以降に語られる。