『人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」』 | 本だけ読んで暮らせたら

『人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」』

人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」

三井 誠/著、講談社現代新書



人類進化に関して明かされてきたイロイロなことを概観した本です。


およそ700万年前にサルから分化したとされるヒト。

現在、ただ一種存在するヒトはホモ・サピエンスです。しかし、数万年前までは別種のヒト=ホモ・ネアンデルターレンシス(いわゆる、ネアンデルタール人)も存在しました。去年(2004年)だって、つい数万年前まで生きていたと分析された新種のヒト=ホモ・フロレシエンシスの化石がインドネシアのフローレンス島で発見されたばかりです。

そもそも、現存種のヒトに至るまでの進化の過程は一筋の道を通ってきたわけではない、と考えられています。サルから分岐した進化の道筋は、途中、幾筋にも分れたそうです。もしかしたら、サルから分化した時だって一筋ではなかったかもしれません(これは、私個人の意見)。

700万年という数字だって、現在までに発見された数例の化石の分析結果だけから推測されているに過ぎず、新しい化石が発見されれば数字の書き換えなどは充分起こりえる話です。


20年位前までは、ヒトが誕生した地はアフリカの大地溝帯東側の乾燥した草原地帯といわれていましたが、現在ではその仮説(イーストサイド・ストーリー仮説)も考え直されているらしいです。最古の人類化石の発見地がアフリカ中央部の、700万年前は森林地帯であったとされる場所だからです。


180万年前にアフリカを出たヒト=ホモ・エレクトス(原人)はヨーロッパやアジアに広がりました。その証拠がジャワ原人や北京原人の化石です。現在、この原人とか猿人とかいう云い方はしないらしいですが・・・。ネアンデルタール人もその進化型だと考えられています。


さて、現生人類であるホモ・サピエンスの“アフリカ単一起源説”というのがあります。

かつて考えられていたのは、アフリカから世界各地に散ったホモ・エレクトス(原人)が各地で進化して現生人類になったとする“多地域進化説”。各地で同時多発的に進化したヒトが、地域を越えて混血した結果、現在のホモ・サピエンスが誕生した、という考えには、どうも無理があったようです。

それに対して・・・、

ミトコンドリアの遺伝情報の解析の結果、世界中のあらゆる人間が1520万年前にアフリカで生きていた1人の女性“ミトコンドリア・イヴ”に行き着くという驚くべき成果が発表されました。ホモ・サピエンスはアフリカに誕生し、世界各地に散った。ヒトは二度、アフリカを出立した、ということです。


このように、ここ数年で、人類進化のシナリオはだいぶ書き換えられてきました。

たった一つの化石の発見、遺伝子解析・分析技術の進歩、などによって従来の仮説がひっくり返ってしまうくらい、この分野の知識・学説は進化(深化)しているのでしょう。

エキサイトといえば、エキサイト、大変といえば、大変、な学問分野です。

そのことを教えてくれる本です。