『森の紳士録 ―ぼくの出会った生き物たち―』 | 本だけ読んで暮らせたら

『森の紳士録 ―ぼくの出会った生き物たち―』

森の紳士録―ぼくの出会った生き物たち

池内 紀/著、岩波新書


ムササビ、アカハラ・クロツグミ、ブッポウソウ、ヒグマ、ウサギ、キジ、サワガニ、カワガラス、イワナ、アマゴ、オオサンショウウオ、モリアオガエル、キノコ、アキアカネ、タヌキ、クマゲラ、ブナ、イノシシ、モズ、モグラ、コウモリ、キツネ、カモシカ、オオカミ。

日本の山林で一般的に見かける動植物を1つずつ取り上げています。

著者が実際に山歩きをして見たことや、同行した人から聞いたりしたこと、その後調べたりしたことを7~8ページの文章にしています。


知識の押し売りでも、押し付けでもない、啓蒙でもない、ただ思ったことを簡潔な文章で綴っただけのエッセイ集です。新書のエッセイ集というのは珍しいのではないかと思います。


この本を読みはじめた際は、題材として取り上げた動植物や山の中の様子についての著者の感性豊かな感想とか、文章の巧さに感心しました。

しかし、読み進むにつれて感じ方も変わりました。55歳で勤めを辞め、自然の山の中を歩き回り、こういうエッセイが書けるような著者の環境がただ単純に羨ましい、というふうに・・・。

私の日常は、人工物と電子機器にばかり囲まれた都心のオフィースと、郊外の新興住宅地にある自宅との往復だけですから・・・。休日に家の周りに出かけても、自然らしい自然はありません。人工的な自然(変な言い方ですが)はあるけど・・・。


せめて、こういう本を読んで、時折ノホホーンとしましょう。


これ→(2005.2/3 記事:『春の数えかた』 日高敏隆/著、新潮文庫) もイイ!!