『天才数学者たちが挑んだ最大の難問 フェルマーの最終定理が解けるまで』
アミール・D・アクゼル/著、吉永良正/訳、ハヤカワ文庫
Xの2乗とYの2乗を足したものは、Zの2乗に等しい。
これを満たすX、Y、Zの値は存在します。たいていの人はX=3,Y=4,Z=5という数値が頭の中に浮かびます。
ところが・・・、
“Xのn乗+Yのn乗=Zのn乗”は、nが2より大きいとき、自然数解を持たない。
これ↑、問題の意味だけなら私でも判ります。
この一見簡単そうな定理、“フェルマーの最終定理”
この証明を巡っては350年間にわたって世界中の数学者達を魅了し、ときに争いごとを生じさせてきました。
その定理が1995年、2編の論文を書いた(うち、1編は共著)プリンストン大学教授アンドリュー・ワイルズによって全面的に証明されました。
この本は、その証明がなされる過程の過去数百年に渡る数学者達のドラマが描かれています。
日本人数学者達が果たした役割や、それを自分達の手柄にしようとした数学者達のはなしも興味深いものがありました。
私が最も驚いたのは、ワイルズが発表した2編の論文のうち、最初の方のより重要な論文である“Modular Elliptic Curves and Fermat’s Last Theorem”が110ページに及ぶ論文だということです。
1年くらい前、私も共著者の1人となって、ある学会の査読つき論文を投稿したのですが、その論文は11ページでした。
数学の世界では100ページを越えるような論文が当たり前なのでしょうか?
だとしたら、やっぱスゴイな~。
私達が投稿した論文の場合、ジャーナルへの掲載が決定するまでには査読、修正査読を経て1年以上も掛かるものでしたが、ワイルズ論文が投稿された際は世界中の数学者達が査読審査に携わり、その期間には数ヶ月しか掛けなかったそうです。その期間の短さもスゴイ。それだけ世界中が期待した論文だったのでしょう。その論文は発売日前に売り切れたそうです。
ワイルズと私を比較すること自体が間違っているか?
この本を読んで驚くポイントも違っている?