『パルプ』 | 本だけ読んで暮らせたら

『パルプ』

パルプ

 チャールズ・ブコウスキー/著、柴田元幸/訳、新潮文庫


オモシロイ!!

今年読んだ中ではTOP3に入ります。もっともこの作品、今年出版されたのではなく、かなり前のことですが・・・。


カバー、最初のページ、中程の挿絵がまるっきりアメ・コミです。絵の雰囲気はミッキー・スピレインの作品を彷彿とさせます。中身はまったく違いますが・・・、こちらの方が深いです。


毎日酒場か競馬場にばかり出入りしているスーパー探偵ニック・ビレーンは、事務所の家賃も払えずに追い出される寸前に陥っていた。そんなときに舞い込んだ4件の依頼。

一つは死んだはずの作家セリーヌを探してくれと言う、レイディ・デス(ドレスはぴちぴちで、いまにも縫い目がはち切れそう。目もくらむ素晴らしい体)からの依頼。

二つ目は知人から頼まれた“赤い雀”探し。三つ目はある男からの妻の浮気調査。四つ目は、宇宙人から付け狙われているという男からの依頼で、その女の姿をした宇宙人を追い払ってほしいというもの。

もう、メチャクチャ。依頼内容も、その解決方法も。

いや、解決方法なんてものはないんだった。ニックは一応依頼を果たそうと動き回るのだが解決しているわけではない。本人の意思に関係なく自然と解決していくんだった。なぜならLAナンバー1のスーパー探偵だから・・・。


最初の依頼人レイディ・デスはその名が表すように死神です。作中ではっきりと言ってはいないけど・・・。四つ目の依頼の対象である宇宙人というのも本当に宇宙人です。

探偵小説になぜ死神や宇宙人が登場するのか?読者はそんな細かい事を気にしていてはダメです。作中の主人公ニックだって受け入れているのだから・・・。ベタな疑問は飲み込んで、そのまま読み続けなければ・・・。

読み続ければ、その先にはなにかが待っている!?


完全にもっていかれました。

なぜ今まで、これほど可笑しく、すっとぼけていて、無骨で、気張っていて、世の中を斜めに見ていて、それでいて物悲しい小説というものの存在を知らなかったのでしょう。

でも、知ることができたから、読むことができたからイイか。


帰りがけに、同じ作家の『町でいちばんの美女』と『ありきたりの狂気の物語』を購入してきました。まだまだ、お楽しみは続きます。


tujigiriさん 、ありがとう!