『海馬 -脳は疲れない-』
池谷裕二、糸井重里/著、 新潮文庫
私は、決して先端的ではないですが、技術的に検討した成果をクライアントに伝えることを生業としており、他者に判って貰うことの難しさや、自分のスキルの足りなさを日常的に感じています。
それだけに、以前、脳科学者・池谷裕二氏の『進化しすぎた脳』( 2005 年3月4日記事) を読んで、この人の“専門知識を素人に伝える力”に感心したことがあります。
学者や専門家が、先端的な知識を一般人にも判り易く伝えることというのは、非常に難しいことなのです。
この池谷氏はその難しいことを、簡単に?やってのけています。きっと、一流の学者なのでしょう。
この本『海馬』もまた、実にオモシロく、判りやすい「脳についての本」です。
糸井重里氏との対談を活字化したというこの本、糸井重里氏が、日常的に感じているコミュニケーションのことや、仕事のこと、創造するということ、などについて話題を振ります。
・ 脳を使うとはどういうことか?
・ 頭がいい、とはどういうことか?
・ 脳は一生成長する!?
・ ・・・・・e.t.c.
それらに対する池谷氏の回答を聞いて、それを糸井流に解釈する際の例え話が、さらにオモシロさと判りやすさを増幅させています。
実は糸井さんは、脳の上手な使い方というものを日常的・感覚的には判っているようなのです。そのことについて、池谷氏が多少、科学的な味付けをしてみたり、より具体的な実験をしてみせることによって、日常的に漠然と感じていることを、素人にもわかる形として表現しているのです。
糸井氏もこの本の中で言っていましたが、脳のことを知ると、ヒトが生きることはマンザラ悲しいことでもなさそうだぜ、っていうことが理解できそうな気がしてきます。
この本、チョット行き詰ったときに読むと、元気が出るかもしれません。