『奇怪動物百科』 その2 | 本だけ読んで暮らせたら

『奇怪動物百科』 その2

奇怪動物百科

 ジョン・アシュトン/著、高橋宣勝/訳、ハヤカワ文庫


1890年に出版されたそうです。著者は1834年生まれのイギリス人です。


古今東西の奇怪な動物たちの目撃談を収集して編んだ本です。(こういう本を書かせたら、やはりイギリス人だナ ← 私の偏見です)


この本で取り上げられている動物?を列挙しますと・・・、

人間、アマゾン(アマゾネス:女戦士のことです)、小人族、巨人族、野人・・・、サテュロス、スフィンクス、・・・、サル、・・・、ケンタウロス、コルゴン、ユニコーン、・・・、熊、狐、狼、狼人間、アンテロープ、・・・、ペガサス、・・・、キマイラ、・・・、グリフォン、フェニックス、ツバメ、イワツバメと足のない鳥、・・・、四足アヒル、人魚、・・・、海牛、海馬、海鼠、海兎、海豚、・・・、イルカ、一角、・・・、サメ、海のドラゴン、・・・、ワニ、・・・、サラマンダー、・・・、ヒキガエル、・・・、ミツバチ、スズメバチ。

ホント、奇怪なモノを取り上げています。


これらの動物の話の中には、現在我々が持っている知識と照らし合わせてみても、そんなにおかしくない説明もあります。でも、そんなマトモな説明は半分もありません。

神話や伝説で聞いたようなものを、あたかも見たかのように絵にしたり、人に語ったりしているものがかなりの割合であります。

さすがに著者(編者)のアシュトンも、全部が全部の話を信用しているわけでもなく、19世紀末の科学的知識と照らし合わせて、かなり客観的な論評もしています。


と、まー、この本に対して否定的なことを言っているように取れるかもしれませんが、私の云いたいことはまったく逆です。

私としては、奇天烈な動物について大真面目に語っている(と思われる)昔の人達の様々な心情や感情を想像すると、なんとなく滑稽であったり、楽しかったり、場合によっては同情的になったりもしてしまいます。

荒唐無稽ともいえる話、バカらしい、と一笑に付すことはできません。


まだ、世界が今ほど狭くなく、人々にとって未知の土地・気候・動植物が大量に存在した時代、実際にとんでもないものを目撃して恐怖に怯えたりしたこともあったでしょう。未知のものを目撃して、それを人に語る場合、記憶は必要以上に誇張される場合もあるでしょう。こういったことが、伝説や神話などと結びつくと、奇怪な怪物やモンスターが生まれることもあるでしょう。


現代でも、占いを信じたり、都市伝説に妙に怯えたりする人がいますが、それと同じ想像力が働いているのだと思います。

つい最近までだって、ネッシーやイエティの存在がまことしやかに語られていましたもんネ!


私だって、子供の頃は怪獣や怪人が大好きだったし、今だって恐竜好きなのは、科学と魔術と信仰が渾然一体としていた時代の人々と、もしかしたら同じような心情があるのかも?なんて思ってしまいます。

実際、こういう本を読んで面白がっていること自体が・・・