「DNAの時代 期待と不安」
著者: 大石 道夫
タイトル: DNAの時代期待と不安 文春新書
2003年4月、ヒトのゲノム(化学物質DNAから成っている生命体の遺伝子の総体)の解読がほぼ終了しました。これによって、生命の秘密が洗いざらい明らかになる時代が来たといえます。
DNA、遺伝子、ゲノムが明らかになって、気になることは何でしょう。
■ヒトとチンパンジーの違いはどのくらいなのか?
■ヒトのクローンは可能なのか?
■遺伝子組み換え植物は安全なのか?
■環境問題は解決する?
■病気になっても、あるいは病気になる前に、遺伝子自体を修復する
“遺伝子治療”が期待できる?
まー、いろいろあるとは思いますが、
最も気になること、それは、ヒトの能力は、遺伝か環境か? ということではないでしょうか。
日本の社会はどちらかといえば、もって生まれた能力よりも、その後の本人の努力(環境に身を置くこと)に価値をみいだす社会ですね。
しかし、この本を読むと、まず間違いなく、ヒトの知的能力・性格・個性などは遺伝子の影響を受けているということが云えそうです。そして、その程度はどのくらいか、何パーセントくらいか、ということになると思いますが、著者は具体的な数値はいいません。
「自然科学者は、ヒトの能力や性格は遺伝的なものに影響されてもおかしくないが、結論を出すにはデータが不足しているという立場をとっている人が多い」、として、はっきりと言いません(言えないのかナ)。
DNA時代の行き着く先には、DNAの恣意的操作による、新たな優生論が待ち受けているのかもしれません。
金のある人間はゲノムDNAを操作し、より優秀な子供を持ち、その優秀な子供はますます裕福になっていく。これが続けば、持つものと持たざるものに2極化する?
↑ こういう世界はオモシロくないですね。
ポピュレーション・ボトルネック(DNAの多様性が小さくなること。こうなると環境の変化に対応できなくなる。)が起きたら、人類滅亡にもつながるような気もします。
近未来(もしかしたら10年程度?)は、少し怖い世界になっているかも・・・